リハノメ考察・レビュー「【第1回】基本動作の分析とバイオメカニクス」~寝返り編 前編~

リハノメPT・OT・ST

このページは現役理学療法士がリハノメPTの講義動画を見て、レビューするコンテンツです。講義動画の見るべきポイント現場で活かせることを発信しています。

動作分析をするにあたって重要なポイントは「それぞれの動作がなぜ行えるか」と考え、各動作を遂行するためのメカニズムを運動機能の面から理解することです。

今回の講義では寝返り動作に必要な運動機能とメカニズムを理解することで動作分析と介入の一助になります。

レビューした人:koheiさん
テーマ 【第1回】基本動作の分析と
バイオメカニクス
寝返り編 前編
カテゴリ
難易度5.0
若手おススメ度5.0
講師 石井 慎一郎先生
理学療法士
国際医療福祉大学大学院
医療福祉学研究科
福祉支援工学分野 教授
配信URLhttps://www.gene-llc.jp/rehanome/contents/
動画公開日2020年10月17日(土)
記事公開日2020年12月1日(火)
講義内容の要点
  1. 寝返り動作分析のポイントを学べる
  2. ヘッドコントロールの重要性とポイントを理解できる
  3. リーチ動作の重要性とポイントを理解できる

質問があれば気軽にコメントください

講義のポイント

講義のポイント

この講義では寝返り動作について、動作分析のポイントを知ることができます。寝返り動作はバリエーションが多い動作といわれています。

寝返り動作のパターンと機序を知ることで、体系化された動作分析と問題点に対する的確な介入方法を学ぶことができます。それらを踏まえ、講義のポイントとして以下に解説します。

その①:正常な寝返り動作は体軸内回旋の有無で判断できる

寝返り動作の異常か正常化の違いには体軸内回旋が生じているかの有無です。よくある片麻痺患者様の初期の寝返り動作では、体軸内回旋が生じず、丸太様の寝返り動作となっています。

体軸内回旋をともなう寝返り動作を大別すると伸展回旋パターンと屈曲回旋パターンに分類されます。発育発達の観点から、成長のプロセスで最初に獲得される寝返り動作は伸展回旋パターンで、体幹機能が分離してくるのにともない屈曲回旋パターンを獲得するため、動作獲得観点からは屈曲回旋パターンの方が難しいです。

また、寝返りから起き上がり動作までの繋がりを考えると伸展回旋パターンでは難しく、屈曲回旋パターンでなければなりません。臨床では患者様の寝返り動作を屈曲回旋パターンに誘導することが目標となります。

それぞれの特徴として、屈曲回旋パターンでは頭側から尾側への運動が波及し、伸展回旋パターンでは尾側から頭側へ運動が波及します。

その②:寝返り動作に必要なメカニズムは4つある

寝返り動作に必要なメカニズムは4つあります。

  1. ヘッドコントロール
  2. リーチング
  3. 体軸内回旋(体重移動)上部体幹の回旋
  4. ライティングリアクション(回線が解ける)

今回の「基本動作の分析とバイオメカニクス寝返り編 前編」ではヘッドコントロールとリーチングについて解説しています。

その③:動作のきっかけはリーチ動作

子どもの発育や発達の観点からも捕食行動や興味関心の結果、追視、追従することでリーチ動作が生じ、リーチ動作の結果骨盤帯が連動して寝返り動作が生じます。

これは他の立ち上がり動作や歩行動作にも関連する考え方で、立ち上がり動作では前方にリーチした結果、重心が前方に偏位し、立ち上がることができます。このようにリーチ動作が動きのきっかけになっているケースは多くあります。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

寝返りではそれぞれの相によって用いる筋肉や動く関節が異なるため、各相によって見るべきポイントが変化します。相ごとのポイントを理解することで、寝返り動作分析の基礎を身に着けることができます。

理学療法士は基本動作を改善する専門家であるため介入する動作のポイントを知らなければなりません。以下に現場で活かせそうな事について解説します。

その①:ヘッドコントロールはVertical Extensionが重要

ヘッドコントロール(上位頸椎の屈曲)は動作に先行して起こり、ヘッドコントロールによって全身の姿勢筋緊張のプライオリティーが決定されます。頭頚部の屈曲によってsuperfical Front Line の緊張が高まり、前面筋が働くスイッチになります。

ヘッドコントロールで重要な点は、上位頸椎の屈曲で顎を引くようなイメージです。多くのクライアントは頭を持ち上げてとの指示に対して、顎が上がってしまい、下位頸椎の屈曲と上位頸椎の伸展が生じてしまいます。その際の主動作筋は舌骨下筋や胸鎖乳突筋で、本来であれば頸長筋の収縮を促したいところです。

頸長筋は第4頸椎に頸椎を引き寄せるような働きをするため、収縮することで、頭が天井に引っ張られるような伸展作用があります。すなわちのけぞるような伸展ではなく、上に向かって伸びあがるような伸展(Vertical Extension)が生じます。

動作の開始時にはVertical Extensionが重要になり、寝返りのような屈曲回旋動作以外でも、運動方向が屈曲、伸展関わらず、Vertical Extensionがポイントになります。動作におけるヘッドコントロールでは、頚部のみが動くことが重要でなく、頚長筋が働くことでVertical Extensionが生じることで、脊柱のS字カーブが整い、結果として頭部の位置が整うことが重要です。

脊柱は身体を支えるための柱の役割がありますが、他にも運動を伝達させるシャフトの役割があります。脊柱のS字カーブがたるんでいる状態では運動が波及しません。体を支え、運動を波及させるためには、運動方向に関わらず頚長筋が働きVertical Extensionが生じることが重要です。

介入のポイント

ヘッドコントロール能力を向上させるためには胸椎の伸展を促すことと、後頭下筋群の過緊張を改善することで頚長筋が働きやすい環境を作ることがポイントです。

頚長筋が働きにくい状態は胸椎が屈曲している状態と、後頭下筋群が過剰に働いている状態で、胸椎が屈曲している状態では、相対的に顎が前に出ることで、結果としてVertical Extensionでなくただの頚部伸展が生じてしまいます。

胸椎屈曲位でなく綺麗なS字カーブの目安としては、胸骨角が胸椎の4番5番にあることです。その位置になければ胸椎アライメント異常の目安となります。

また、後頭下筋群は頭部と頚部のつなぎ目にあり、頚部後方の筋肉のため、頚長筋の拮抗筋となります。後頭下筋群が過緊張の状態では相反神経抑制によって頚長筋が抑制されて働きにくくなってしまいます。

その②:寝返り動作の円滑化にはリーチ動作が重要

寝返りではリーチ動作も重要となります。寝返りを阻害する体節は肩甲骨です。肩甲骨は両側に張り出しているため、寝返りで回る方向に対して同側の肩甲骨は突っ張りとなり、反対側の肩甲骨は重りとなってしまいます。そのため肩甲骨をたたむ動きが必要となり、リーチ動作をおこない、肩甲骨を前方突出させる必要があります。

肩の屈曲動作が円運動なのに対して、リーチ動作は直線的な運動です。リーチ動作では上腕二頭筋と上腕三頭筋が主動作筋となります。上腕二頭筋は瞬間的に働き、対して上腕三頭筋は筋肉の伸長にともなって、リーチする場所を調整するように働いています。

リーチ動作はセントラルパターンジェネレーターとして脳や感覚入力から独立したパターン運動と考えられているため、複雑に考えなくとも対象物が目に入るだけで、物に手を伸ばすことができます。

人間にも四足歩行時代のパターンジェネレーターが残っているため、リーチ動作に伴い体重移動や下肢、骨盤帯も連動して動き、体重移動がおこります。寝返り動作で頚部屈曲の後にリーチ動作が生じる理由は、上肢のリーチ動作にともない骨盤帯が連動し、円滑な体軸内回旋が生じるためです。

寝返り側の肩甲帯は下敷きになるため、床面で固定されている下側肩甲骨に対して胸郭動き、引き込まれることで相対的な肩甲骨前方突出が生じます。その際の主動作筋は反対側の菱形筋で反対側菱形筋が前鋸筋とつり合いをとるために肩甲骨と上位胸椎を引き込みます。

介入のポイント

リーチ動作で重要となる筋肉は主動作筋である前鋸筋を始め、肩甲骨を安定させる僧帽筋中部線維と菱形筋です。寝返り時に上肢をリーチすると寝返り方向の反対側上肢は腕の重みで土台となる肩甲骨が寝返り方向とは逆に倒れてしまいます。

そのため、肩甲骨を胸郭に固定するための筋力が必要です。その時に働くのが僧帽筋中部線維と菱形筋で、これらの筋肉が、肩甲骨の内側縁を胸郭に抑えつける必要があります。

脳卒中片麻痺の患者様では後面の筋肉である、菱形筋と僧帽筋中部線維が働きにくくなり、丸太様の寝返りが生じやすくなります。

まとめ

「基本動作の分析とバイオメカニクス寝返り編」の講義のポイントと現場で活かせそうなことについて解説しました。

正常な寝返り動作は体軸内回旋が生じているかが重要で、屈曲回旋パターンの体軸内回旋が生じることで、その後の動作である起き上がりに繋がります。屈曲回旋パターンの獲得には、頚長筋を主動作筋とするヘッドコントロールからリーチ動作に繋がることが重要となります。

寝返り動作は個人により多様なパターンがありますが、この講義を通して、効率の良い寝返り動作パターンと問題が生じやすいポイントを知ることで、動作分析と介入に役立てることができます。

片麻痺や整形外科疾患での回復期のリハビリに携わる機会のある理学療法士には臨床に活かせる内容ばかりなので必見の講義です。是非参考にしていただければ幸いです。

この記事を書いた人

kohei
さん

理学療法士7年目。20代の男性で一児の父。理学療法専門学校卒業後は、整形外科クリニックに入職し、変形性疾患やスポーツ傷害のリハビリテーションを経験。その後リハビリテーション特化型デイサービスに施設長として転職。

整形外科クリニック入職後から、スポーツトレーナとして、学生からプロチーム、年代別の県代表などに帯同し、現在もスポーツ現場に関わる。

経歴

  • 2010年~2013年:理学療法専門学校時代
  • 2013~2018年:整形外科クリニックに就職
  • 2018年~現在:リハビリテーション特化型デイサービスに転職

資格

  • 理学療法士

質問があれば気軽にコメントください

コメント一覧

タイトルとURLをコピーしました