リハノメPTレビュー「膝のスポーツ外傷を学ぶ!ACL損傷に対する術前術後のリハビリテーション」早期復帰を目指した評価とアプローチ

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ACL損傷は整形外科領域では代表的なスポーツ外傷の一つです。私の勤務する整形外科クリニックでもACL損傷の患者さんに関わる機会があります。

また、バスケットボールやサッカーなどの有名選手でも受傷することがあり一般の方にも知られている疾患です。スポーツで受傷することが多いため目標はスポーツ復帰になることが多いです。

スポーツ復帰するためにはACLの再断裂を予防するため、受傷肢位を誘発しないように動作学習する必要があります。

そのためには、術前から術後まで計画的にリハビリを進めることが重要です。以下に講義のポイントと現場で活かせそうなことを解説します。

レビューした人:yasuoさん
テーマ 膝のスポーツ外傷を学ぶ!
ACL損傷に対する術前術後のリハビリテーション
~早期復帰を目指した評価とアプローチ~
カテゴリ
難易度3.0
若手おススメ度5.0
講師 今屋 健 先生
関東労災病院 中央リハビリテーション部
主任・理学療法士
配信URLhttps://rehanomept.socialcast.jp/contents/23
動画公開日2020年5月1日(金)
記事公開日2020年8月17日(月)
講義内容の要点
  1. 前十字靭帯靭帯(以下、ACL)損傷の受傷肢位を理解する
  2. ACL損傷は術前から術後まで計画的なリハビリが重要

質問があれば気軽にコメントください

講義のポイント

講義のポイント

講義ではACLに対する解剖学、運動学的な理解が深まるとともに術前、術後にセラピストが何を行うべきか詳しく解説されています。

ここでは、講義のポイントとしてACLが他の靭帯よりも受傷機転が特殊であるという点、ACLが損傷したときには術前から術後まで計画的なリハビリを進めることが重要であるという点、術後リハビリの基本的な考え方の3つに注目します。以下に解説します。

その①:ACLの受傷肢位は他の靭帯より特殊

ACL断裂の受傷肢位を理解することは、再建術後の再断裂を防ぐために非常に重要なポイントです。なぜなら、受傷肢位となる動作にならなければACLが断裂に至る可能性を格段に減らすことができるからです。

したがって、リハビリの目標も受傷肢位ならない膝の機能を獲得することになります。膝関節にはACLの他に後十字靭帯(以下PCL)内側側副靱帯(以下MCL)、外側側副靭帯(以下LCL)があります。

他の受傷肢位を見ると、PCLは後方剪断・外旋、MCLは外反・外旋、LCLは内反・外旋による直接的に伸張ストレスが加わったことにより損傷しますが、ACLは外反・内旋・軽度屈曲による複合的な肢位と不安定な関節で荷重したことにより損傷します。

ACLは他の靭帯とは異なる特殊な肢位で受傷します。ACLが特殊な受傷機転になる背景には脛骨大腿関節の形状が関連しています。脛骨大腿関節は脛骨側と大腿骨側それぞれ内側と外側の二つ関節面が合わさっています。

大腿骨の関節面は内側・外側ともに凸状ですが、脛骨の関節面は内側が凹状であるのに対し、外側は凸状になっています。

そのため、外側の関節面はボールの上にボールが乗った状態の不安定な関節面となります。外反位では、不安定な外側の関節面で荷重することになります。ジャンプからの着地や切り返しの動作は膝が軽度屈曲します。

そこで外反が伴うとACLが急激に伸張され40msecという短い時間で断裂します。

その②:術前から術後まで計画的なリハビリ

ACL損傷後のリハビリは再建術後にどこまで膝関節の柔軟性が得られるか、また大腿四頭筋の筋力を戻すことができるかという点が注目されます。

したがって、術前のリハビリは術後のリハビリほど重要視されない印象がありました。実際、術前のリハビリを行なっていない施設も多数あるというのが現実です。

しかし、講義では「術前のリハビリでの回復具合で術後の回復が概ね決まる」と解説され、術前リハを必要ないとの認識であれば考え直さければなりません。再建術後には侵襲組織周囲に癒着・瘢痕化が起こることで柔軟性が低下します。

また、炎症と不動により大腿四頭筋の筋力低下が高頻度に起こります。そのため手術してからリハビリを頑張ればよいのではなく、術前から膝の可動域と大腿四頭筋筋力の増強を図っておく必要があるのです。

講義では研究結果と元に詳しく解説されています。術後8ヶ月において術前の伸展制限がどのように影響するかという研究で、術前に健側と比較して伸展制限がない群でも術後に伸展制限が起こることが示されています。

さらに、術前に伸展制限があった群では術後の伸展制限がより大きくなるという結果が示されています。筋力に関しても術前に伸展制限のなかった群では健患側比88.9%まで回復したのに対し、術前から伸展制限のあった群では81.1%に留まったという結果が示されています。

よって、術前から膝が伸びていなければ術後の筋力も回復しにくくなると言えます。術後8ヶ月はスポーツ復帰の目安であり膝は完治していなければならない時期です。

それだけの期間をかけても術前の機能が影響しているという興味深い結果です。術前から伸展制限を改善させることと大腿四頭筋筋力を増強しておくことが重要なことが理解できます。

その③:ACL再建術後のリハビリテーションの考え方

ACL再建術後のリハビリで最も重要な考え方が「機能的な膝の獲得を目標とする」ということです。では、機能的な膝とはどのような状態でしょうか。

関節の機能として可動域・安定性・筋力の3つが挙げられます。3つが全て備わって初めて機能的な膝になります。ACLが断裂した際には関節の制動力が低下します。

可動域・安定性・筋力の3つの機能のうち、まず安定性が失われることになります。ACL再建術を行うことで安定性が改善します。

しかし、それだけでは機能的な膝を獲得したとは言えません。そのため術後のリハビリが重要なのです。

例えば、可動域を見ていくと膝の伸展制限が起きた場合、一見硬くなるため安定性はよくなるのではと思われますが、伸展制限があると伸展筋力は回復しにくく、パフォーマンスの低下を招きます。

一方で、筋力ばかりに目を向けて術後から、とにかく必死に筋力増強運動をすれば炎症を助長し、再建靭帯に負担をかけ結果的に安定性が低下することになりかねません。

可動域、安定性、筋力すべてがバランスよく備わって機能的な膝になります。最も大事な要素が伸展可動域です。

前述のように伸展可動域の低下は伸展筋力の回復に影響を与えます。また、伸展可動域の評価で重要なことは参考可動域である伸展0°は正常とは限らないということです。

健側の膝伸展が0°の人もいれば過伸展5°の人もいます。健側が過伸展するのに、患側が0°であればそれは伸展制限と言えます。

ゴニオメーターを当てた角度に囚われず健側を基準にすることが基本になります。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

講義ではACL損傷の受傷肢位や手術の方法、術前・術後のリハビリまで幅広い知識を得ることができます。その中で実技を用いた動画も多数紹介されています。

ACL損傷の徒手検査の方法や術後早期から必要となるエクササイズの方法も詳しく説明されています。

ここでは、現場でALC損傷の患者さんをみる上で特に重要なラックマンテストと術後早期に行うヒールスライド・クアドセッティング、再発予防のための考え方を解説します。

その①:ACLの治療に有用なラックマンテストの方法

ACL損傷後や再建術後のリハビリにおいてACLの状態を知るための検査や膝の可動域を知るための検査が重要になります。

講義では、ACLの検査としてラックマンテストが紹介されています。ラックマンテストとは代表的なACLの徒手検査です。講師の今屋先生は、ACLの徒手検査の中で最重要な検査であると解説しています。

ラックマンテストはACL損傷の診断に用いられる検査ですが、セラピストが行う治療にも有用な検査であるため最重要と言われています。検査は膝軽度屈曲位で、大腿に対して下腿を前方に引き出し、エンドポイントが感じられなければ陽性となります。

ここで重要なのが軽度屈曲位です。軽度屈曲位といえば膝屈曲20〜30°という印象を持ちますが、そこまで屈曲してしまうとACLの緊張度合いがわかりにくくなるため屈曲10〜15°の浅い屈曲角度で行うことを推奨されています。

また、ラックマンテストを適切に行うためのコツとして検査者が力まずに行うこと、被検者をリラックスさせてバランス良く大腿骨と脛骨を持つこと、関節裂隙を持たずに離れた位置で持つこと、脛骨を前方に引き出すときに大腿骨にカウンターを当てて平行移動させることなどが挙げられています。

さらに、講義の中では実技の動画も紹介されておりラックマンテストの方法が詳細に理解できます。講義で解説されている点を注意しながら、臨床でも実践すると適切な検査ができます。

その②:ヒールスライドとクアドセッティング

術後早期に正常歩行を獲得する方法として、ヒールスライド、クアドセッティングが紹介されています。ヒールスライドとは、両手で大腿後面と保持し、下肢をリラックスさせた状態で踵を滑らせるように膝を屈伸させる運動です。

自動介助運動で患者さん自身が自主トレでも実施します。膝は屈曲する際に下腿の内旋を伴います。

そのため、ヒールスライドでも膝の屈曲に伴い、つま先を内側に向けることで軽い内旋を組み合わせて運動するのがコツです。ヒールスライドの最終伸展域では大腿骨を下に押し込むようにして自動介助運動を行います。

大腿骨を押し込むことで、相対的に脛骨は前方へ滑ることになるため構成運動に沿った運動になります。

膝の可動域を獲得するとともに、膝伸展筋力を回復させることも重要になります。膝伸展筋である大腿四頭筋の代表的なエクササイズとして、クアドセッティングがあります。

ACL以外の膝疾患の患者さんにもよく行うエクササイズですが、簡単そうに見えて以外と難しい運動です。内側広筋を上手く収縮させることが重要ですが、ACL再建術後には筋力低下が起こり収縮感覚も低下していることが多いです。

そのため、クアドセッティングを行う際にも、いかに収縮感覚を回復できるかが重要になります。収縮感覚を回復させるためにはしっかり筋収縮を目視することが大事です。

背臥位で筋が目視できない状態では適切に行いにくくなります。長座位で実施することで収縮が目視できることと、大腿直筋を短縮させることにより、内側広筋の収縮を促します。講義ではさらに詳しく解説されており臨床に活かすことができます。

その③:再発予防には方法論よりも機能を見ることが大事

術後リハビリの目標は機能的な膝を獲得することだと述べました。さらにスポーツ復帰を達成するためには、再断裂を予防することが重要です。スポーツ復帰を果たしても再断裂してしまっては、術後のリハビリが無駄になってしまいます。

膝の完全伸展を獲得し大腿四頭筋の筋力もある程度回復したら、CKCでのトレーニングを行なっていきます。クアドセッティングやSLRが上手に行えるようになれば、1/4スクワットを実施します。

スクワットもACL損傷以外の患者さんでも実施することの多いエクササイズです。スクワットを実施する際、足先から膝が前方に出ないように指導することが多いです。

しかし、この方法は大殿筋やハムストリングスを優位に活動させるため、大腿四頭筋の活動を弱めてしまいます。大腿四頭筋の強化を目的に行うスクワットは、股関節と膝が同じくらい屈曲するように実施します。

ここで大事なのが、足先と膝の方向を合わせknee inしないように行うことです。1/4スクワットで knee inしてしまうなら大腿四頭筋の筋力は不十分であり、ハーフスクワットや片脚スクワットに移行できません。

大事なのは、術後1ヶ月でレッグランジをしたり、バランスボールに載ったりするなどの方法論に頼るのではなく、膝の機能が獲得できているかということです。膝の機能が獲得できていれば再発予防のトレーニングもしっかり行うことができます。

まとめ

「膝のスポーツ外傷を学ぶ!ACL損傷に対する術前術後のリハビリテーション~早期復帰を目指した評価とアプローチ~」の講義を受けることで、ACL損傷の受傷機転から術前・術後のリハビリについて学ぶことができます。

講義のポイントでは、ACLの受傷機転の特殊性に触れることで、どのように再発を予防するかを考え、術前・術後の計画的なリハビリが重要であること、術後リハビリの考え方についても解説しました。

講義では、ここでは解説していない手術の方法やACLの解剖学的理解なども解説されています。後半の現場で活かせそうな事に関しては講義の中で実技を用いて紹介されていることを中心に解説しています。

実技の動画を見るだけでも運動療法の参考になります。ACL損傷のみならず膝に対する運動療法を考える上で有用な情報ばかりです。

クアドセッティングやSLRで大腿四頭筋の収縮が低下し、また内側広筋の活動が不十分な状態でCKCの運動に移行しても機能的な膝は獲得できないことが理解できます。

とりあえず、スクワットをやってみようという考え方ではなく、クアドセッティングやSLRが適切に行えているからスクワットに移行できるという考え方に変わります。多くの膝疾患の患者さんに活かせる内容になっており必見の講義です。

この記事を書いた人

yasuo
さん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

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