リハノメPTレビュー「松本先生の骨折の評価と運動療法の考え方~橈骨遠位端骨折を中心に~」骨折後の評価と運動療法の考え方を学ぶ

リハノメPT

このページは現役理学療法士がリハノメPTの講義動画を見て、レビューするコンテンツです。講義動画の見るべきポイント現場で活かせることを発信しています。

整形外科分野に携わる理学療法士なら、骨折後の患者さんのリハビリを行うことは多いでしょう。理学療法を行う上で損傷組織の治癒を妨げずに、機能障害を回復させることが重要です。

特に、骨折後のリハビリでは骨癒合を阻害せずに、いかに拘縮を予防するかを重視します。今回の講義では高齢者に多い上肢の骨折の一つである橈骨遠位端骨折を中心に、骨折後の評価と運動療法の考え方を学ぶことができます。

骨折後のリハビリに携わる機会のある理学療法士には、知識の向上に繋がる内容です。以下に講義のポイントと現場で活かせそうな事について解説します。

レビューした人:yasuoさん
テーマ 松本先生の骨折の評価と運動療法の考え方
~橈骨遠位端骨折を中心に~
カテゴリ
難易度3.0
若手おススメ度5.0
講師 松本 正知 先生
桑名市総合医療センター リハビリテーション科 副室長
整形外科リハビリテーション学会 常任理事・理学療法士
配信URLhttps://rehanomept.socialcast.jp/contents/37
動画公開日2020年5月1日(金)
記事公開日2020年9月9日(水)
講義内容の要点
  1. 橈骨遠位端骨折後のリハビリの概要を理解できる
  2. 骨癒合を妨げずに拘縮を最小限にすることが大事

質問があれば気軽にコメントください

講義のポイント

講義のポイント

この講義では橈骨遠位端骨折を中心に骨折後のリハビリをどのように進めていけばよいか理解できます。骨折部の状態を知るためには解剖学的理解が必須です。正常を理解していなければ異常はわかりません。

また、骨折後の整形外科的な治療に関してもリスク管理上最低限の知識は必要です。骨自体が治癒しても拘縮が残ってはADLに支障が出るため拘縮予防も重要です。

それらを踏まえ、講義のポイントとして以下に解説します。

その①:解剖学を理解しているかどうかは絵が描けるかどうか

骨折後の患者さんのリハビリに携わる上で重要なことの一つが、対象とする部位の解剖学を理解することです。この講義では橈骨遠位端骨折を中心に様々な情報が解説されます。講義の序盤で解剖学の重要性を解いています。

講師の松本先生は何も見ずに、骨や軟部組織の絵を詳細に描けることは、個々の理学療法士の解剖学的理解度に相当すると言います。実際に松本先生のセミナーでは絵を描くことが多いとのことです。

講義の中ではどのように絵を描くか解説されています。絵が描けるということは解剖学的位置関係を理解している証拠になります。

私も講義を聞きながら絵を描いてみました。ぼんやりと理解できていると持っていたところが実際には異なり、細かく見ていくと新たな気づきがありました。

平面で描いた絵を患者さんを目の前にしたときに三次元的に投影し、さらに触診できれば対象とする組織の評価や治療に生かすことができます。

また、絵を描けるようになることでレントゲンやCTなどの画像所見を見るときにも役立ちます。画像所見を見る力が身につけば適切な理学療法を実施する助けになります。
これはすぐにできるようになるわけではなく繰り返し、何度も描いて覚えて、理解を深めていくしかありません。

長い道のりですがあきらめずに継続することで患者さんに与えられるものも増えるはずです。

その②:整形外科的な治療の理解

骨折後のリハビリのおいては整形外科的な治療の理解が必要です。理解できていない場合、効果的な理学療法が行えないばかりか損傷組織の治癒を遅らせることに繋がります。

そこで理学療法士には整形外科医と連携を取るための知識が必要です。

前腕骨遠位端骨折では、骨折線の位置や転位の方向によって診断名が異なります。関節外骨折の場合、橈骨が背側へ転位したものをコーレス骨折、掌側に転位したものをスミス骨折といいます。

関節内骨折の場合、橈骨が背側に転位するバートン骨折、掌側に転位する逆バートン骨折、橈骨茎状突起が骨折するショフール骨折があります。

また、粉砕骨折やTFCC(三角線維軟骨複合体)を介した張力が作用して生じる尺骨の茎状突起骨折を伴うことも稀ではありません。

治療に関しては保存療法と手術療法があります。小児の場合は骨膜が厚く自己矯正能力が高いため保存療法が原則となります。

青壮年や高齢者では骨折の状態により保存療法か手術療法が選択されます。骨折部の転位が大きい、粉砕骨折になっていると手術療法が選択されることが多いです。

手術はピンニングや掌側ロッキングプレートによる骨接合術が行われます。理学療法士には受傷時と手術後の画像を比較し、なぜ手術療法が選択されたのか把握することで拘縮が起こりやすい部位、筋力低下に影響しそうな部位を予測することが求められます。

その③:骨癒合を妨げずに拘縮を予防する

骨折後のリハビリでは骨癒合を第一に考えなければなりません。骨癒合を阻害しないように配慮しながら同時に可能な限り拘縮を予防、改善していくことが重要です。拘縮は時間との戦いです。

損傷から時間が経過するほど、組織の癒着が進み拘縮の改善は困難になります。拘縮を予防、改善するためには骨折後に組織が、どのように修復されるのか知っておく必要があります。

骨折は骨だけの問題ではありません。骨折が起こるほどの外力が加わったということは、当然その表層の筋や関節構成体、脂肪、皮膚にも損傷が生じる可能性があります。

手術療法が選択された場合は、手術侵襲によるものも影響します。炎症や手術侵襲は組織間の癒着を招きます。

講義では、拘縮の程度は深層ほど激しく浅層ほど軽度になると解説されます。そのため、拘縮の治療は、浅層から深層に向かって考えていきます。

講義で紹介される術後5日のエコー動画では、すでに長母指屈筋周囲の癒着が確認できます。術後5日の皮膚、皮下組織はマクロファージによる掃除が終わり、コラーゲンが増殖する時期です。

そこで、手術直後から数日は皮膚の滑走性維持と浮腫管理が重要になります。拘縮とは伸張すべき組織が伸張しないか、滑走するべき組織が滑走しないと起こります。

骨癒合を妨げない範囲で、手指の運動を行い、そして筋収縮を促し滑走性の維持を図ることが重要です。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

理学療法士は運動を用いて治療する専門家であるため、治療部位の運動学を知らなければ動かすことができません。手部の運動は複雑ですが理解することで、治療に役立てることができます。

骨折後は固定期間がありますが、その時期に行わなければならないことは何かを考えることも重要です。骨折後のリハビリは、どの時期に何をやるか理解していなければなりません。

講義では実技が多く紹介されており、明日から使えるものばかりです。以下に現場で活かせそうな事について解説します。

その①:手関節の運動学として重要なRing theory

手部の運動学に、Ring theoryというものがあります。講義では手関節の背屈を例に説明されています。

手根中手関節において、第2、3中手骨底と手根遠位列は、骨性にも靭帯性にも強固に結合しています。

そのため手部では、一つ一つの骨が別々に運動するのではなく集合した一つの構造物として運動します。第2中手骨底には長橈側手根伸筋が、第3中手骨底には短橈側手根伸筋が付着しています。

両者が収縮することで第2中手骨から小菱形骨へ、第3中手骨から有頭骨へ力が伝わり、橈側では大菱形骨から舟状骨へ、尺側では有鉤骨から三角骨へ力が伝わります。

さらに舟状骨から月状骨へ、三角骨から月状骨へ力が伝わることで、手部全体として背屈運動が可能になります。Ring theoryを行うためには、力を伝えるの靭帯の存在が必要です。

骨と骨の間を繋ぐ組織がなければ力が伝わることはありません。手部には多くの骨が存在しているため、それらを繋ぐ靭帯も多くなります。

その一つ一つを細かく覚えることは大変ですが、大枠を把握することで臨床に活かすことができます。これらの靭帯は力を伝えるために重要ですが拘縮すると制限因子になってしまいます。

講義では靭帯にどのようにアプローチするか動画で紹介されているため臨床に活かすことができます。

その②:ギプス固定・創外固定中の運動療法

固定期間に行えることは限られます。だからと言って疎かにはできません。固定中の運動療法は、固定が除去された後にも影響を与えるため重要です。固定中の運動療法の目的としては、固定部以外の拘縮を予防することにあります。

具体的には手指の浮腫管理と手指の可動域と滑走性・筋力の維持です。

私も臨床で、橈骨遠位端骨折の患者さんのリハビリに携わることがあります。ギプス固定中にリハビリの処方が出て固定部以外の運動療法を行った場合と、ギプスが除去されてから運動療法を開始する場合では、手部以外の関節の硬さを実感することがあります。

骨折後の固定期間が終わり、ギプスが除去されてからのリハビリ開始では、手指の可動域に制限があり、手指の運動に痛みを伴う患者さんに出会うことが少なくありません。患者さんはリハビリで指導されない限り、骨折部に負担がかかる運動なのか、固定中から行ったほうがよい運動なのかわかりません。

そのため、不要な安静をします。不要な安静は骨折部に関係のない部位の拘縮を作ってしまいます。固定中からリハビリを行う場合には、固定部以外の拘縮の予防が重要なのです。

講義では、どのような流れで固定中の運動療法を実施すればよいのかわかりやすく解説されています。

その③:骨折後の運動療法の基本的な流れ

講義では運動療法の基本的な流れが解説されています。(1)浮腫除去 →(2)皮膚の滑走練習 →(3)筋収縮練習 →(4)ストレッチング → ⑤各関節の可動域練習の順に実施し、この流れを何度も繰り返します。

浮腫管理は毛糸を指に巻いて20分を1サイクルとして行います。指の血管は細いため長時間圧迫を持続させるのは、血行障害を起こる危険があるため20分で状態を確認します。毛糸を巻いた状態で手内在筋の収縮練習を行います。

皮膚滑走練習は、手術の創部の皮膚を動かします。感染リスク確認のため必ず主治医の許可を取ってから行います。術創部が離開しないように指で挟んだ状態で、縦横に皮膚を滑走させます。運動は1分程度にします。

時間が長すぎると炎症を助長する可能性があるため、短時間で終了することが重要です。

筋収縮練習では、等尺性収縮と等張性収縮を組み合わせることで筋の収縮距離を稼ぎ、隣り合う組織との癒着を防ぎます。

また、筋収縮を行うことで筋の伸張性や滑走性を維持します。ストレッチングでは、ギプス固定中には手指を中心に、ギプス除去後で骨癒合が進んでいれば、手関節も含めた筋に対して実施します。

その後、各関節の可動域練習を実施します。講義では、橈骨手根関節と手根中央関節に分けて可動域練習の方法が示されています。動画で運動を紹介しながら詳しく解説されているためすぐに臨床で実践できます。

まとめ

「松本先生の骨折の評価と運動療法の考え方~橈骨遠位端骨折を中心に~」の講義のポイントと現場で活かせそうなことについて解説しました。

橈骨遠位端骨折は、整形外科に勤務していると出会う頻度の多い疾患です。手部は関節が多く細かい解剖学的理解が必要です。

運動に関しては、橈骨手根関節と手根中央関節が、それぞれどのように動いているのか知らなければなりません。

また、手指の運動を担う筋も多いため合わせて、考えなければなりません。橈骨遠位端骨折では、骨癒合が不十分な時期に、橈骨手根関節の積極的な運動は回復を遅らせる場合もあります。

この講義を受けることで、手部の理解が深まり、リスク管理をしながら適切な運動療法を実践しやすくなります。橈骨遠位端骨折だけでなく、骨折後のリハビリはどのように行えばよいのかという基本的な流れも掴むことができます。

骨癒合のためには固定が必要。しかし、固定は拘縮を作るという矛盾した状況の中で、理学療法士のできることは何か、常に考える姿勢が大事であると再確認できる内容です。

骨折後のリハビリに携わる機会のある理学療法士には、臨床に活かせる内容ばかりなので必見の講義です。是非参考にしていただければ幸いです。

この記事を書いた人

yasuo
さん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

質問があれば気軽にコメントください

コメント一覧

タイトルとURLをコピーしました