リハノメPTレビュー「脊柱管狭窄症へのアプローチ」間欠跛行の病態理解を深め介入戦略を考える

リハノメPT

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腰部脊柱管狭窄症は整形領域に従事する理学療法士であれば馴染みの深い疾患です。腰部脊柱管狭窄症は文字通り脊柱管がなんらかの原因で狭くなり特徴的な間欠跛行が出現します。

加齢に伴う退行変性によるもの、腰椎すべり症由来のもの、椎間板ヘルニア由来のものなど狭窄の原因は様々です。狭窄している箇所を理学療法士が外部から力を加えて広げることは困難です。

では腰部脊柱管狭窄症に対するリハビリは何を行うのでしょうか。

構造自体は治せなくともリハビリは可能です。講義は前編では概要を理解することが主であるのに対し、後編ではどんな方法で改善を測るかに焦点を当てています。

今回は臨床に直結する内容である後編の講義の解説をします。

レビューした人:yasuoさん
テーマ 脊柱管狭窄症へのアプローチ 後編
~間欠跛行の病態と介入戦略~
カテゴリ
難易度4.0
若手おススメ度4.0
講師 河重 俊一郎 先生
医療法人 全医会
あいちせぼね病院
リハビリセンター長・理学療法士
配信URLhttps://rehanomept.socialcast.jp/contents/55
動画公開日2020年6月27日(土)
記事公開日2020年7月21日(火)
講義内容の要点
  1. 間欠跛行の病態理解を深める
  2. 病態に基づいた介入戦略を考える

質問があれば気軽にコメントください

講義のポイント

講義のポイント

腰部脊柱管狭窄症の患者さんと関わる機会は多いですが疾患自体を治そうとするのは難しいため何をすればよいのか悩んでしまいます。

まずは理学療法として何ができるのか明確に整理する必要があります。疾患から起こる症状に対して対症療法的に介入するのが理学療法士の役割です。

それが整理できないと疾患ばかりに囚われてしまい、動けなくなります。この講義を受けることで整理しやすくなります。以下に講義のポイントを解説します。

その①:脊柱管狭窄症のリハビリとは~構造的原因と非構造的原因~

腰部脊柱管狭窄症の症状としては殿部~下肢の痛みやしびれ、腰背部の痛みがあります。そのなかでも特徴的なものが、歩行しているとしびれや痛みが出現し、座位で休むと症状が緩和されるという間欠跛行です。

臨床で腰部脊柱管狭窄症の患者さんの訴えを聞くと「歩いていると足が痛くて、長く歩けない」「下り坂を歩くとお尻から足が痛くなって何度も座って休憩しながら歩く」といった具合に間欠跛行を示唆する内容が多いです。

そのため、間欠跛行の症状を改善できるかどうかが、患者さんのニーズに答えることになります。腰部脊柱管狭窄症のリハビリでは、間欠跛行がなぜ起きるのかを整理する必要があります。

また、それが理学療法で改善できるものかどうかも重要です。理学療法で改善できないものに対して行ってもよくなることはありません。理学療法で改善できるものと判断できれば介入の糸口が見つかるのではないでしょうか。

その点について講義では、間欠跛行の原因として構造的原因と非構造的原因に分けて解説しています。

構造的原因とは文字通り脊柱管の狭窄が脊柱の変形や骨棘、黄色靭帯の肥厚、椎間板ヘルニア、腰椎すべり症、腫瘍など構造上の理由で起こるものです。構造的原因に対して理学療法が変化させることは困難なので非対象となります。

それに対して非構造的原因には、①姿勢依存性の腰椎前弯増強と、②pumping effectの低下の2つがあります。非構造的原因には理学療法士の介入によって改善できる可能性があります。

その②:腰椎前弯増強(姿勢依存性)

腰部脊柱管狭窄症は腰椎の前弯が増強することで、脊柱管がさらに狭窄され殿部~下肢の痛みやしびれが起こりやすくなります。

そのため、歩行時に腰椎の前弯した状態が持続すると症状が出て、座位で腰椎の前弯を減少させると症状が緩和されます。単純に考えると腰椎前弯を増強しなければ、脊柱管がさらに狭窄されることはないということになります。

腰椎の前弯が増強してしまう姿勢を修正すればよいので、理学療法士にもアプローチできる部分があります。

姿勢を修正するためには、腰椎の前弯の増強する原因を考えなければなりません。腰椎の前弯の増強には腰椎を伸展させる筋の過緊張、股関節屈曲筋群の短縮、腹筋群の機能低下があります。腰椎の伸展筋として挙げられるのは腰部多裂筋や腰腸肋筋などです。

講義の中では特に多裂筋に焦点を当てて解説されています。腰部疾患と多裂筋は切っても切り離せない関係にあるため確実に見ておくべき部位です。股関節屈筋群が短縮すると骨盤が前傾することで二次的に腰椎の前弯を増強させます。

具体的には腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋の硬さや短縮を確認しストレッチで柔軟性改善を図ります。

多裂筋も股関節屈筋群もある程度柔軟性を確保しても、まだ症状が緩和されない場合は腹筋群の機能低下によって腰椎の前弯増強を抑えることができないことが考えられます。

そこで腹筋群へのアプローチを進めます。これらが改善することで腰椎前弯が増強した姿勢を修正に導いていきます。

その③:pumping effectの低下

pumping effectとは聞き馴染みのない用語かもしれません。私は勉強不足でこの講義で初めて知った用語でした。pumpingという言葉から、足部や下腿の浮腫の改善に対して行われる下腿三頭筋の収縮を利用したマッスルパンピングが思い出されます。

筋の収縮によって静脈還流を促すために行われます。筋収縮を利用しているわけではありませんが腰部脊柱管狭窄症に対してもパンピング効果を促す運動が存在するとのことです。間欠跛行の原因として脊柱管内に存在する硬膜外静脈叢の還流障害があります。

腰椎の前弯が増強することで硬膜外静脈叢が圧迫される状態が続くと、還流障害により、間欠跛行が起こるという流れです。

講義では「腰椎後弯域の改善による動的pumping effectの促進が、硬膜外静脈叢の還流改善に作用し、間欠跛行改善させる可能性 (林ら、2007)」の研究報告の紹介ともpumping effectについて解説されています。

腰椎の屈曲と伸展が繰り返し起こることで硬膜外静脈叢の還流を促されますが、ここで重要なことは腰椎の後弯可動性を改善させることです。臨床場面でも体幹の前屈で腰椎の可動性が低下している方は多く見られます。

腰椎のどのレベルの椎間関節の動きが少ないか評価し、そのレベルの椎間関節のモビライゼーションを行うことで可動域拡大を図っていきます。

腰椎の伸展で狭窄部位が、さらに狭窄されるため屈曲方向へ誘導すれば改善しそうなイメージはありましたが、臨床での肌感と実際のデータが繋がるとより理解が深まります。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

腰部脊柱管狭窄症に対して理学療法士として改善できそうな部分と改善できなさそうな部分について整理できたでしょうか。整理できていない場合は講義を何度も見返して自分なりに理解することが必要です。

講義のポイントで腰部脊柱管狭窄症による間欠跛行改善に対しては腰椎前弯の増強を防ぐことが大事だとお話ししました。

講義では臨床で活用できる内容が実技を交えて紹介されています。どのように活かしていくか解説します。

その①:多裂筋に対するアプローチ

腰部の主要な伸展筋である多裂筋の過緊張は腰椎の前弯を増強するため間欠跛行の症状悪化を招く要因になります。

そのため多裂筋に対するアプローチは腰椎前弯増強を改善するため重要な選択肢の一つです。腰椎前弯が増強していて多裂筋のスパズムもある場合、まずは緊張を緩和させるところから治療の糸口を探っていくのもよいでしょう。

また、多裂筋に関しては脊髄神経後枝内側枝で支配され同レベルの椎間関節と同一の神経支配であり、椎間関節由来の関連痛も引き起こします。受容器が豊富で姿勢調節に寄与しているとも言われます。

多裂筋が過緊張になることで不良を作る可能性があるため、多裂筋に対するアプローチは重要です。臨床でも腰部多裂筋は腰痛関連の疾患の患者さんでは硬くなっていることが多く、腰部脊柱管狭窄症のみならず他の疾患でも応用できる知識となります。

講義では患者さんに治療側を上にした側臥位の姿勢を取っていただき、股関節屈曲位で体幹と骨盤の回旋を利用して、多裂筋のダイレクトストレッチと筋の収縮弛緩を用いたリラクゼーションの方法が紹介されています。

早速臨床で試してみましたが、多裂筋の過緊張が緩和されるとともに、腰椎の屈曲可動性が改善することもあり臨床に活かせることを確認しています。講義では多裂筋を適正に使用できるようにするための収縮訓練も紹介されていますので参考になります。

その②:股関節屈曲筋群の柔軟性評価

講義のポイントでもお話ししましたが股関節屈曲筋群の柔軟性低下は骨盤前傾を招き腰椎前弯の増強につながります。

特に歩行に立脚後期では股関節伸展可動域が約10°必要とされていますが、可動域制限があると骨盤の前傾や腰椎前弯を強めて、代償的に推進力を維持しようとします。腰椎前弯の増強は狭窄部位をさらに狭小化し間欠跛行の症状を増悪させる可能性があります。

そのため股関節屈曲筋群の柔軟性の確保は間欠跛行改善に重要な要素です。講義のなかでは骨盤前傾を強くする筋として腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋について解説されています。

腸腰筋に対してはThomasテスト、大腿直筋に対してはElyテスト、大腿筋膜張筋に対してはOberテストでそれぞれ検査することができます。

これらの筋の柔軟性をみる検査はすべて検査側を上側にした側臥位で行います。そして、すべてのテストで骨盤を後傾位に保つため、ベッド側の下肢を屈曲し膝を抱えるように、患者さんに持っていただくと検査しやすくなります。

Thomasテストは股関節を伸展することで腸腰筋の柔軟性をみます。大腿直筋であれば膝関節屈曲を伴いながら股関節伸展して柔軟性をみます。大腿筋膜張筋であれば骨盤を挙上させた状態で股関節を内転させて柔軟性をみます。

柔軟性が低下していることが確認されれば検査したポジションでストレッチに移行することができます。腰部脊柱管狭窄症の患者さんだけでなく他の腰痛疾患、股関節疾患でも使用頻度の高い検査なので方法を理解しておくことが重要です。

その③:腸腰筋と腹筋群機能改善

多裂筋の過緊張は緩和され適度に収縮ができるようになった。股関節の伸展可動域も十分に確保された。

それでも、歩行時の間欠跛行が改善しない場合は動作時の腰椎前弯を抑える腸腰筋と腹筋群の機能に着目しましょう。腸腰筋は股関節伸展を遠心性に制御するとともに腹筋群の腰椎固定を助ける役割があります。

特に、大腰筋は腰椎骨盤帯と股関節の分離運動に関与していると言われ骨盤、体幹の前方安定性に重要です。講義では腹筋群の全体的な賦活の導入としてBracingの方法が紹介されています。

立位で腹式呼吸の要領で腹部を膨らませながら吸気を行います。腹部を引き締めるように固めて腹筋群の収縮を促します。

その状態を維持して軽い呼吸を繰り返し、腹筋群を使用した状態で動作を行うための準備を整えていきます。保存療法の方だけでなく手術後の患者さんにも適応になる運動として紹介されています。

脊柱管狭窄症だけでなく腰椎圧迫骨折後の患者さんに対しても体幹のトレーニングとして実施できそうな内容です。腹筋群の収縮が賦活できたら次は腸腰筋です。腸腰筋の収縮訓練は股関節深屈曲位からさらに屈曲させることで行うことが多いですが、収縮感が得られにくい特徴があります。

そこで講義では両上肢を挙上しセラピストが上肢を介して体幹後傾方向へ負荷をかけ、患者さんがそれに抵抗していただく方法が紹介されています。

この方法では、股関節の深部にある腸腰筋に意識が向かなくても、結果的に骨盤前傾方向への運動を促すことができ、患者さんには介入しやすい方法です。講義では他の方法も紹介されていますので確認していただくと臨床に活かせる部分があるでしょう。

まとめ

「脊柱管狭窄症へのアプローチ 後編 ~間欠跛行の病態と介入戦略~」の講義を受けて講義のポイントと臨床で活かせそうな事について解説しました。

腰部脊柱管狭窄症では間欠跛行の症状に悩む患者さんが多いですが、疾患名に囚われてしまうと変形や構造変化によって狭窄症自体を改善させるのは困難です。

しかし、疾患名に囚われず文字通り症候群として捉え、機能障害に対して対症療法として行えることはないかと考えると介入しやすくなります。

理学療法は本来対症療法であり関節可動域制限や筋力低下、持久性低下、痛みがどのように動作能力の低下に繋がっているか考え物理的手段を用いて治療にあたります。その基本を忘れずに患者さんと関わっていくことが重要です。

「脊柱管狭窄=治らない」ではなく講義のポイントでもお話ししたように、構造的原因と非構造的原因に分けて考えることで整理しやすくなります。この考え方は腰部脊柱管狭窄症以外の疾患でも当てはまります。

変形性膝関節症や頚椎症、腰椎椎間板ヘルニアなどでも構造的変化は起こります。慢性疾患ほど姿勢の変化や筋の柔軟性低下、痛みなど複雑に重なっている場合が多いものです。

一つ一つを細かく見ながらも患者さんの社会的背景や生活習慣などの全体像を把握し一人の人間として捉えることが、リハビリテーション的な考え方になります。講義を受けて局所も全体もどちらも大事だと改めて実感しました。

この記事を書いた人

yasuo
yasuoさん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

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