リハノメPTレビュー「体幹・股関節に着目した解剖学と運動学」運動器疾患に対する評価とアプローチ

リハノメPT

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腰痛や圧迫骨折など整形領域では体幹と股関節をみる機会が多くあります。体幹の重要性は理解しているが、なんとなく苦手意識がありどのように評価してよいか悩むセラピストは私だけではないはずです。

しかし、体幹をしっかりみることができれば評価の幅が広がることは間違いありません。この講義では体幹をどのように見ていくべきか評価の総論的な話から解剖学、運動学の視点でどのように見るかとうい点に至るまで学習することができます。

体幹に対する苦手意識を克服したい方にとっては必見の講義です。以下に講義のポイントと現場で活かせそうなことを解説します。

レビューした人:yasuoさん
テーマ 体幹・股関節に着目した「なぜ?」を紐解くために
必要な解剖学と運動学 前編
~運動器疾患に対する評価と
アプローチの考え方を中心に~
カテゴリ
難易度5.0
若手おススメ度4.0
講師 工藤 慎太郎 先生
森ノ宮医療大学 保健医療学部
理学療法学科 准教授・理学療法士
配信URLhttps://rehanomept.socialcast.jp/contents/58
動画公開日2020年7月11日(土)
記事公開日2020年8月14日(金)
講義内容の要点
  1. 体幹の評価は3ステップで進める
  2. ローカルマッスルに対するアプローチが理解できる

質問があれば気軽にコメントください

講義のポイント

講義のポイント

体幹をどのように評価するのか方法がわからなければどうにもなりません。講義では評価の考え方を学ぶことで、体幹のみならず運動器疾患全般に生かすことのできる方法を提案しています。

臨床で、すでに実践していることであれば復習になり、新たな考え方であれば自身の行なってきた評価をグレードアップすることができます。

いずれにしても評価の引き出しを増やすことになるでしょう。以下に講義のポイントを解説します。

その①:従来の評価方法では不十分

患者さんをどのように評価するか考えたときにまず思い浮かぶことは学生時代にも習ったトップダウンやボトムアップといった評価方法です。

トップダウンとは動作観察を行い、そこから問題点を予測し検査・測定によって動作を阻害する機能障害を明らかにしていく過程です。

一方、トップダウンと対をなす評価方法がボトムアップです。患者さんに必要な検査・測定を一通り行い、そこから得られた機能障害から動作能力の低下を考えていく方法がボトムアップです。

学生のころの臨床実習では症例レポートを作成するためあらゆる検査・測定を行います。評価にかなりの時間を費やすため、現場ではボトムアップよりトップダウンで評価する場合が多いでしょう。

この評価の過程は何も間違いはないのですが、運動器疾患の評価としてはこれらの方法では不十分なところがあります。

運動器疾患の場合、「歩けない、立ち上がれない」という訴えよりも「歩くときに腰が痛い」「膝が痛くて立ち上がりにくい」「肩を挙げるときに痛くて物が取りにくい」など、痛みがあるために動作が行い難くなっていることが多いです。

そのため、歩行観察をしても「なんとなく痛そう」とか「痛みをかばって歩いているな」ということがわかるだけで痛みの原因を探ることはできません。

運動器疾患には従来型の評価だけでなくもう一歩踏み込んだ評価が必要になります。

その②:評価の3ステップ

講義では運動器疾患特有の評価方法として3ステップで紹介しています。具体的にはステップ1が、力学的ストレスの明確化、ステップ2が解剖学的評価、ステップ3が運動学的評価となります。

力学的ストレスの明確化とは、例えば腰部であれば体幹を屈曲すれば、椎体には圧縮ストレスが加わり、椎間関節には伸張ストレスが加わります。

反対に、体幹を伸展すれば椎体に伸張ストレスが加わり、椎間関節には圧縮ストレスが加わります。

立っているだけで痛いのか、前かがみになったときに痛いのか、歩いているときに痛いのか問診することで、痛みのある場所にどんな力学的ストレスが加わっているか、明確することが第1のステップです。

次に、解剖学的評価とは例えば圧迫骨折の既往のある患者さんに対して、腰が痛いと言われたら、「また骨折したのではないか」とドキっとします。

しかし、痛みの原因は椎体の圧壊によるものだけではありません。

椎間関節由来の痛みや筋性の痛みなどどの組織に原因があるのか明らかにするのが第2ステップである解剖学的評価です。

第2ステップまで痛みの原因がわかったら実際にその組織にアプローチします。その結果、硬い部分が取れて一時的に痛みが減ってもまた痛みが再発する。そこで大事なのが、第3のステップである運動学的評価です。

なぜそのような動作になってしまうのかを考え原因となる動作を改善させることが運動学的評価になります。

その③:綺麗なアライメントはストレスが少ない

講義の中で体幹を見る上で重要なことは、脊柱のアライメントが綺麗に保たれていることであると解説されます。

脊柱のアライメントが保たれていると立位、歩行時には骨性支持で安定性を保ちやすくなるため、特定の筋の過活動が抑えられます。

また、椎体や椎間板、椎間関節にかかる負荷を制御しやすくなり結果的に痛みが出にくい状態になります。

脊柱のアライメントを保つために他動系と自動系があります。他動系とは静的支持機構のことであり、骨、関節、靭帯がそれに当たります。

自動系とは動的支持機構のことであり、脊柱の運動を制御する筋がそれに当たります。脊柱のアライメントが崩れると他動系、自動系の両者に過剰な負荷がかかります。

どのような負荷がかかっているか、脊柱のアライメントを確認することで判断します。具体的な方法は立位姿勢を観察することです。

姿勢によって椎間関節や椎体にどのような負荷がかかっているか。どの筋が活動しやすくなり、どの筋の活動が弱くなっているか予測することができます。

例えば、腰椎が過前弯している場合は他動系である椎間関節には圧縮ストレスが、椎体間には伸張ストレスが加わっています。

また、自動系である筋では多裂筋の過活動が起こっていると予測できます。平背であれば椎間関節には伸張ストレスが、椎体間には圧縮ストレスが加わり、多裂筋は伸張されながら活動が低下した状態になると予測できます。

このように脊柱のアライメントから他動系、自動系にどのような負荷がかかっているか、予測することで治療の糸口が見えてきます。

現場で活かせそうな事

現場で活かせそうな事

3ステップの評価を利用し問題点を抽出できたら、次にどのような治療を進めていくかが気になるところです。

体幹を見ていくときに、アウターマッスルとインナーマッスルのバランスはよく考えるポイントでしょう。

特に体幹の安定化を考えるときには、インナーマッスルが重要になります。講義ではインナーマッスルの活動が不足していると判断し、どのようにアプローチしていくかについても紹介されています。講義の内容を踏まえ、現場で活かせそうな事を以下に解説します。

その①:グローバル筋システムとローカル筋システム

体幹の動的支持機構としての筋の機能はグローバル筋システムとローカル筋システムに分かれます。グローバル筋システムには内腹斜筋、腹直筋、外腹斜筋、脊柱起立筋があります。

所謂、アウターマッスルにあたる表在筋であり、脊柱全体の運動を調整し、胸郭から骨盤への力の伝達に役立っていると考えられていています。

一方、ローカル筋システムには腹横筋、多裂筋、骨盤底筋群、横隔膜があります。所謂インナーマッスルにあたる深部筋であり腰椎の分節的安定性に寄与しています。

グローバル筋とローカル筋の2つのシステムが、相互に作用し協調しながら働くことで、腰椎の安定性が確保された状態でパフォーマンスを行うことができます。

腰部の安定性と運動性を確保するため、表層に外腹斜筋があり中間に内腹斜筋があり、さらに深部に腹横筋が存在しています。

ここで外腹斜筋と内腹斜筋、腹横筋は神経支配が異なるため機能も異なる可能性があると解説されます。

また、内腹斜筋と腹横筋では、内腹斜筋の方が神経支配の構成分節が低いことから、内腹斜筋は骨盤部の、腹横筋は胸郭の運動を制御しているのではないかという仮説を立てています。

ここから例えば、骨盤、殿部に腰痛の原因をみるのであれば内腹斜筋を、胸郭を含めた上部体幹の影響に腰痛の原因を見るのであれば、腹横筋に特に注目していく必要があると考えられます。

ただし臨床では胸郭と骨盤部の両面とも見ていかなければなりません。

その②:腹横筋をどう見るか

腹横筋は筋肉のコルセットとも呼ばれており、腰痛患者さんに対して腹横筋の活動を高めることが重要と考えています。私も臨床で腹横筋の活動を高めるためのエクササイズを実施することがよくあります。

腹横筋の活動を高めるエクササイズとしてドローインという方法があります。ドローインは呼吸に合わせて行います。呼気とともに腹部を引き込むように凹ませていきます。

講義では、ドローインを行うことで本当に腹横筋が収縮しているのか、エコー画像をもとに示されています。

安静時の腹横筋の筋厚と比較し、ドローインした際の筋厚が2倍以上になるのが正常とされています。講師の工藤先生のクリニックでは腹横筋の活動を定量化するため、患者さんにルーティンで腹横筋のエコー検査をしているとのことです。

ここから腹横筋を活動させるために、ドローインが有効であることが理解できます。

また、動作の中で腹横筋がどのように活動しているかについても研究されています。そこでYバランステストを用いた検証も行なっています。

Yバランステストとは片脚で前方、後外側、後内側にリーチするテストです。Yバランステスト中の体幹の運動方向と腹横筋の活動の結果、体幹のあらゆる運動で腹横筋が一定に働いているとの結果が出ました。

運動に関わらず立位での動作中に、腹横筋が体幹の安定化作用として機能することを示唆します。臨床では立ったままの作業中に腰痛が出たり、長時間運転の座位姿勢で痛みが強くなる患者さんに応用できそうです。

その③:多裂筋をどう見るか

体幹のローカル筋システムとし腹横筋と共に、重要な筋が多裂筋です。多裂筋は固有背筋内側群の一つであり脊椎神経後枝内側枝に支配されます。

多裂筋の収縮により椎間関節に圧縮力が加わることで、安定性と運動性の両面から体幹の運動を確保しています。

腰痛患者さんに関わる機会があるセラピストであれば、一度は多裂筋の重要性を考えたことがあるでしょう。

講義では多裂筋に対する研究も紹介されます。多裂筋が、腹臥位の状態で正常に活動している群と不全群に分け、Yバランステストで動作中の多裂筋の活動に優位な差があるか、エコーを用いて検証されています。

その中で、前方に片脚をリーチした際に正常群よりも、不全群で体幹の屈曲角度が少なかったという結果が出ました。

このことから、前方リーチの動作を見ることで多裂筋がしっかり活動できているか予想することができます。腰部多裂筋がしっかり活動すると腰椎の前弯をつくることになり、脊柱のアライメントを整える上で重要な要素になります。

多裂筋のトレーニングには、四つ這い一側上肢を挙上し体側の下肢を伸展させる方法などがありますが、講義では端座位でゴムチューブを利用し、骨盤の前傾と腰椎の前弯を行う方法が紹介されています。

さらに、多裂筋に電気刺激を入れて収縮を促しながら、実施しているとのことです。私も講義で紹介されて方法を参考に、前方リーチテストと多裂筋のトレーニングを臨床でも活用しています。

まとめ

「体幹・股関節に着目した「なぜ?」を紐解くために必要な解剖学と運動学前編」では、従来の評価方法では不十分だった点を運動器の特有の評価方法を取り入れることで、計画から治療まで組み立てやすくしています。

脊柱のアライメントから力学的ストレスを考え、解剖学的評価で何筋が伸張され、何筋の活動が低下しているか、椎間関節や椎間板にはどのような負荷がかかっているかを触診したり動かしたりしながら判断します。

運動学的評価で脊柱のアライメントを正しく保つために、何筋の活動を高めなければならないか判断し再発予防も含めたアプローチをします。
今回の講義では、この評価の3ステップが理解でき、臨床で活用できるようになることが最も重要なポイントです。

腰痛改善や動作の安定性を図るために、体幹のインナーマッスルが重要なのことは多くのセラピストが考えていることでしょう。

その知識があってもどのように問題点を推察して、どのような治療方法を選ぶかということは評価が適切に行えるかどうかにかかっていると考えます。

体幹のみならず運動器全般の評価の組み立てを学ぶことができるため、若手のセラピストだけでなく10年以上の経験者でもオススメの講義内容です。

この記事を書いた人

yasuo
さん

30代の男性で二児の父。現在は整形外科クリニックに勤務。外来リハビリ中心のクリニックで肩関節周囲炎や腰椎椎間板ヘルニア、交通外傷の患者さんなどを担当。入院では主に腰椎圧迫骨折や大腿骨頚部骨折の手術後の患者さんのリハビリを行う。

経歴

  • 2009年理学療法士資格を取得
  • 2009~2013年:内科と整形外科のある一般病棟、回復期病棟、外来リハビリ部門のある病床数150床の一般病院
  • 2013~2020年:急性期病棟、回復期病棟、外来リハビリを持つ病床数300床の総合病院へ転職
  • 2020年~:病床数19床の整形外科クリニックへ転職

資格

  • 理学療法士

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